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多重債務問題の法的処理に関して

多重債務者は社会生活から排除された状態にある。そしてまた、精神的に非常に不安定な状態にあって、また相談現場からも隔絶しているという状況にあるという指摘がなされている。「多重債務問題は、単に法的な処理をすれば、それで多重債務問題がすべて解決るわけではない。第1に、受任通知を出して債権者からの取立を止め、平穏な状態をつくり出す。第2に、費用については分割も受け付ける。第3に、適正な処理を心がける。第4に、債務者本人に意識改革を求める。高い金利のところから安易に借りてしまうという発想こそが問題だ。

きっかけがギャンブルであれ生活費であれ、根本的な原因をまず認識する必要がある。債務整理の手続はそれからでいい。そうやって、多重債務に二度と陥らないようにする」(前出『改正貸金業法とこれからのクレサラ相談窓口のあり方を考える』より)。わたしも、まったく同感であり、そのとおりだと思う。ちなみに、日本弁護士連合会(日弁連)は過払い金返還請求事件の処理にあたって、弁護士のなかに債務者(依頼者)と面談せず事務職員任せにし、さらに過払い金返還請求だけして、その他の債務整理はしない者がいるとの苦情が多発していることをふまえて、2009年7月17日に「債務整理事件処理に関する指針」を定めた。

この指針は、債務整理の目的は債務者の経済的更生にあるという原則を確認し、そのために原則として弁護士が債務者と直接面談すること、過払い金返還請求のみ受任して他の債務を放置するようなことをしないよう会員に求めている。先ほどの弁護士の主張する大量事件処理は、この指針にはたして適合しているのか疑問なしとしない。

「カウンセリング無用論」

テレビなどのマスコミで大々的に宣伝している法律事務所の所長・弁護士が最近、本を出版した。この本のなかで、24時間対応のコールセンター(100人体制)を置き、マニュアルに従って「一糸乱れず事件を管理・処理」していると述べている。その規模は、年間6,000件、年間の売上規模は20億円と自慢する。「弁護士としてすべきことは、極論すれば何についての相談か、どこに問題があるのか、その判断だけである」「まず、ズバリ問題の核心に迫り、解決方法を述べる。そうすると、多くの悩みも一気に解決する」「依頼人の話を一から十まで懇切丁寧に聴く必要があるだろうか。

はっきり言うが、まったくないのである」「弁護士の仕事は、最終的な結果を導き出せれば完了するし、依頼人もそれを望んでいるはずだ」「従来の弁護士はカウンセラーとなっており、問題解決に必要のない事柄に多くの時間を割いている。これでは、大量の事件処理をすることができないのは当たり前だ」。このように、多重債務の事件処理については、インターネットなどを使って一括大量処理を行うべきだと提唱する。しかし、わたしはこの発想は事案を本質的に解決することにはなちないばかりか、仮にうまく対処したとしても、債務者の自覚が乏しければ、かえって弁護士と司法に対する不信感を増す危険もあると危惧する。

自身、これまでパラリーガル(弁護士の指示・監督のもと、法律業務を行う法律事務専門職。リーガルアシスタント)の活用を提唱してきたので弁護士の主張を全否定するつもりはない。かといって、マニュアルだけで「一糸乱れず」に事件が処理できるほど債務整理が単純・簡単な事案だとはまったく考えていない。パラリーガルには心理学を勉強してもらう必要があると思うし、債務整理は何よりもマンツーマンでじっくり時間をかけた聞取りからスタートすべき事案だと考えている。大量処理によってビジネス化したことを自慢したいのだろうが、そのやり方には根本的・致命的な欠陥があると思えてならない。

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