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相談者のための勉強会「再生プログラム」

多重債務が単に借金の問題であるなら、法的手続により借金はゼロ、もしくは収入の範囲内で返せるよう返済計画を立てることで解決・再生できるはずである。ところが実際には、一度借金を法律で解決した後もまた借金を繰り返してしまう人がいる。それは、借金を法的に処理しただけでは、その人の心の持ち方や考え方、生活パターンが変わっていないために、生活の立直しにつながらず、根本的な原因の解明、問題の解決に至っていないためと考えられる。そこで女性自立の会では、個別のクレジットカウンセリングのほかに、相談者がともに集い、学び、成長するための勉強会「再生プログラム」に取り組んでいる。

勉強会では基本的な家計簿のつけ方、心と家計の立直し方のほかに、消費者カクイズと題した消費者知識の習得にも取り組んでいる。知っている人にとっては当たり前の消費者知識でも、知らない人にとっては大きな落とし穴となり、そこから多重債務につながるケースもある。参加者が生きてきた過程のなかで間違って習得してしまった知識と思い込みを正しい知識へと修正する作業によって、参加者は自分の間違った思い込みに気がつき、知らないことを知る喜びを実感する時間となっている。2009年度からは、再生プログラム参加1年未満の方を対象とした「初級クラス」と、再生プログラム参加1年以上の方を対象とした「応用クラス」の2クラスに分けて、その再生過程に合わせたプログラみに取り組んでいる。

この勉強会を通して、過去の自分を振り返り現在の自分と向き合う時間をもつことで飛躍的に成長していく相談者が多い。その成長に触れるごとに、再生プログラムは相談者の再生に有効だと実感している。ちなみに再生プログラムは、相談者ができる限り参加しやすいよう土曜日の午後に行い、参加費は茶菓の実費負担というルールで進めている。それでも再生中の相談者であれば交通費もかかるので遠方からの参加であれば負担になるのだが、毎回参加してくれる人もたくさんいて大いに励まされる。

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クレジットカウンセリングの役割

クレジットカウンセリングには2つの役割があげられる。第一は、多重債務問題は当事者の心の問題に起因している場合が多い点にかんがみ、相談者の心の安定と回復を目的とした「心のケアに重点を置いたカウンセリング」である。ここでは、なぜこのような状況に陥ってしまったのかについて、相談者自身が気づき認識できるよう導く。第二は、どうすれば生活の改善が図られるかを相談者と一緒に探ると同時に、相談者が自身のお金め使い方の「癖」を知り、金銭感覚を養うように導くことを目的とした「家計アドバイスに重点を置いたカウンセリング」である。

すなわちそれは、DMP(相談者の家計を分析し、どのような改善策をと名べきかを助言する)と、FP(安定した家計に導くための計画を立てる)の視点を取り入れた、マイナス家計から安定した家計に導くクレジットカウンセリングだと考えられる。このように「心のケア」に重点を置き債務からの解放を目指し、同時に生活習慣を見直すことで、同じことを繰り返さない自分づくりを目指す。これが、わたしが考えるクレジットカウンセリングの目指しているものである。

そのためにはカウンセラー主体ではなぐ、相談者主体、相談者の目線に立って再生を目指したクレジットカウンセリングでなければならないことはいうまでもない。つまり、カウンセラーは債務者の再生に向けた意欲が醸成されるのを促し、その意欲がフルに満たされたとき、債務者の意思によって法的債務整理手段を選択し実行に移す。そして法的整理によって一義的な債務から解放された後は、相談者の家計管理の意欲を高めるよう提案と助言を行うと同時に、境遇と目的を同じくした仲間たちとともに歩める場を提供するのである。

再発防止クレジットカウンセリングの意義

2006年12月、いわゆるグレーゾーン金利の撤廃と債務者の年収を基準に貸出枠を決める総量規制を目玉とした新貸金業法が成立した。さらに2009年6月には、いわゆる次々販売の規制を目的として特定商取引に関する法律および割賦販売法が改正された。はたしてこれら新法は「多重債務問題・消費者問題を未然に防ぎ、悪徳業者を排除する」という目的の達成につながっているのだろうか。そして、多重債務を抱えた人の真の救済、「再発防止」へとつながっていくのだろうか。1996年より14年間、多重債務相談の現場に身を置いている。

これまで4,000人を超える多重債務者の声を聴いてきたが、その大半は消費者として生きていくなかで、だれもが遭遇しそうな「ちょっとしたきっかけ」から惜金が始まっていた。もちろん、借金を抱えた人全員が多重債務に陥るわけではない。本人の心の問題、生活環境、油断、金銭感覚の甘さなどさまざまな事情が絡み合い、最初は小さな借金でも、繰り返すことでやがて自身の収入では支払うことができない多重債務へとつなかっていく。さまざまな原因・きっかけにより多重債務へと陥った相談者と向き合い、その心に寄り添うことで、相談者の再起と自立に取り組んできた。その経験から多重債務問題は、特別な人が陥る特別な問題ではなく、「だれでもが陥る危険性のある身近な問題」であり、「心の問題、そして命の問題」だと知った。

多額の借金を抱えて支払不能となった人にとって、法律での債務処理は即効性があり、有効であることはいうまでもない。しかし、たとえ借金を法律で解決できたとしても、本人の生活環境・お金の使い方の「癖」・考え方、何より多重債務に陥った「その人の内にある」根本原因が法律で改善されたわけではない。どうやって人生を再建すればよいか、その術がわからないままのリスタートでは、同じことを繰り返す危険性は否定できない。だからこそ、相談者が二度と多重債務問題を繰り返すことのないように、クレジットカウンセリングを施すことは有効かつ必要なのである。

面談を重ねる

債務整理を依頼した人との付合いが3年を超え5年以上に及ぶこともなんら珍しいことではない。もう消滅時効が完成しているのではないかというときでも、本人がなんとか少しずつでも返済していきたいというなら、それを支えたいと考えている。受任してすぐに裁判所に申立するのは、優秀なベテラン事務員を抱えているため、容易なことである。しかし、そんな「一丁上がり」方式でいいとは思われない。大量の債務整理案件を抱えていると必然的に事務職員を活用することになる。前述した日弁連の指針が出る前から、原則としてわたしが毎月1回、債務者(依頼者)と面談している。

このとき、家計収支表を前に置いて近況を報告してもらう。お茶を飲みながら世間話することも多い。「ここのお茶は美味しいですね」といってくれると、「ああ、お茶を味わうゆとりがもてるようになったんだな」と思う。面談するたびに顔つきが柔和になり、心からの笑顔をみせてくれる人に接すると、わたしまでうれしくなる。中立書の作成は担当の事務職員が扱う。もちろん、なんらかの問題が発生したときには、あらためて面談して債務者と協議する。また、クレサラ被害者の会(大牟田しらぬひの会)とも密接に連絡をとりあっている。

具体的には、依頼者に対する家計簿のつけ方についての指導は「しらぬひの会」の毎月の研修会に参加してもらう。研修会とは別に開かれる毎号1回の学習会は、必ずしも債務整理に絡むテーマとは限らない。「核兵器のない平和な世界を目指して」というテーマだったり、看護師を招いて健康チェックをしてもらったりすることもある。多様なテーマを企画しているのは、借金支払に追われて視野が狭くなっていた依頼者に、社会に広く目を見開いてほしいという願いからである。事件の大量処理と持続的な生活再建援助をいかに両立するか、法律事務所にとって現実にはなかなか困難な課題であるが、これからも両立できるように頑張っていきたい。

目前の取立てだけが問題ではない

たくさんの借金を抱えて支払に行き詰まると、借金取りに追われる。いまでも乱暴な取立てがなくなったわけではない。ひどい取立てはもちろん止めさせる必要がある。しかし、取立行為の行きすぎを止めさせただけでは根本的に解決したことにはならない。なぜ、そのようになったのか、原因をきちんと明らかにしておく必要がある。「高い金利の支払に追われて借金を重ねた」と弁明する。たしかに、途中からはそうだろう。しかし、要点は「そもそもの借金の原因が何なのか」である。「生活費に困って借金した」というときでも、「なぜ生活費が足りなくなったのか」「収入が減ったのか」「それはどうしてか(失業・病気・不況)」「支出が増えたのか」「それはどうしてか(事故・病気・パチンコ・飲み代)」というように具体的に話を進めていく。

結局は、家計簿をきちんとつけていない。計画性がないまま、その日暮らしで過ごしてきたのではないか。カードの使いすぎという場合には、本人は一見すると豊かな生活をしていることがある。洋服を何十着ももっていた若い女性がいた。彼女は、日頃の満たされない気持ちをカードでの買物で紛らわせていた。たくさんの借金を抱えで支払に行き詰まった人の多くは、いわば心身になんらかの欠陥のある病人だと考えている。しかも、たいていはかなり重症の患者である。そこで、まず本人にこのことの自覚をもってもらうことが必要だ。

そのためにも、時間をかけてじっくり見極めながら、事件の処理を進めていくのである。ひと頃より客が減ったといわれるパチンコ店だが、相変わらずの繁盛ぶりには呆れるばかりだ。それだけ心が満たされていない日本人が多い。昼も夜も、テレビなどで商品購買意欲をかき立てられているなかで、次々にカードを使って商品を買い、行き詰まる人々が多数出てくるのは必然的な現象である。お金のかからない楽しみをみつけよう! ひたすら辛抱するだけ、というのでは長続きしない。やはり一家団楽と息抜きは必要だ。本当に豊かな生活は、モノに頼らなくても実現できるはず。

人間らしい生活を取り戻すにはどうしたらよいのか、いまごそ考え直すべきときなのだ。借金の整理をしてしまった後で、またもや借金をするようでは困る。これからは借金をしなくても無理なく生活していけるのか、きちんとした見通しを立てることが大切だ。いま失業して無職の人は仕事を探すことが先決だし、病気したりして働けないときには、生活保護を受けられるように手続をとるべきだ。生活保護は申請したからといって、すぐに受けられるわけではない。生活の場と収入を確保してはじめて安心して生活ができる。家族みんなで今後の生活設計をよくよく話し合うことが欠かせない。

すべての借金を対象にする重要性

仕事がうまくいかない、夫婦関係がギクシャクしている、いろいろストレスがたまる。そんなことが身のまわりには次々に起きてくる。このような苦しみから逃げるために次々に買物したり、パチンコに凝ってしまったりする人がいる。逃げ回るのはもうやめよう。正面から苦しみに立ち向かいながら、生きていく楽しみを見出そう。これは口でいうのは簡単だが、決してたやすいことではない。だからこそ、家族や周囲の人々の温かい支えが必要なのである。解決のためには、すべての借金を本人が書き出すことが絶対に必要だ。「忘れた」とか「領収書を捨ててしまったからわからない」といっても、それをそのまま鵜呑みにはできない。

それはたいてい嘘。そんなことをいうとき、本人はまだ十分に心を開いていない。なぜなら、頭のなかにはこの何ヵ月もの間、借金のことしかなかったはず。「どこに、いつ、いくら支払うか」これで頭がいっぱいだったのに、そんなに簡単に忘れるはずはない。メモがあって当然だ。メモがないときでも、よく思い出してもらえば、かなりのことが再現できる。これをいい加減にしてしまうと、解決方法の選択で大きな間違いを犯し、悔いを残すことになる。借金のなかには、もちろん保証債務も含まれる。借金するために友人と互いに保証人になり合ったということもよくある。そのとき、「この借金は友人が支払うことになっているから大丈夫」ということは通用しない。保証人になり合うような友人はアテにならない。

「これくらいなら他人の力を借りなくても自分1人で支払っていける」とか「ここだけは自分が支払っていこう」などと考え、借金の一部を隠す人は少なくない。それは、プライドというより、見栄や虚栄心からだ。暴力金融からの借金だけを隠して、それを支払っていると、またまた行き詰まってしまうということにもなりかねない。友人に頼んで借金してもらったり、親に頼まれて借金を重ねるということも珍しくない。これらの名義借用のケースも、保証人のときと同じで困難を抱えている。いずれにせよ、、正確に債務一覧表に書き出すことが不可欠だ。新しい人生のスタートをしっかり切るためには、すべての借金を書き出して、完全に解決し切ることが絶対に必要である。

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